アパートなどの収益物件を所有している方が亡くなると、その物件は「財産」として子どもへ相続されます。
財産があるのはいいことですが、そのままの形で財産を渡そうとすると相続税がかかり、子どもに大きな負担をかけてしまうケースも少なくありません。
そうならないためにも、今から相続税の負担を減らしておき、相続した方が困らないような優良な資産にしておくことが必要です。
そこで、相続税の負担を減らす方法の1つとして「不動産の法人化」があります。
この記事では、相続の予定がある不動産オーナーへ向けて「法人化のメリット・デメリット」「法人化する際の注意点」などを解説します。
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通常、親から子どもへ遺産を移転するときには、贈与税や相続税といった税金がかかります。
これらの税負担を減らすために「親が会社を設立し、親の個人遺産を会社名義にする」という方法があります。
それがいわゆる「不動産の法人化」と呼ばれるものです。
それでは、なぜ法人化することによって相続税の節税につながるのでしょうか?
以下、相続税対策につながるメリットを3つご紹介します。
メリット①個人と法人で資産を分散させられる
不動産法人化でのもっとも大きなメリットといえるのが、この「所得分散効果」です。
通常、相続税は個人が所有する財産に対してかけられます。
しかし相続したからといって、すべての方に相続税がかかるわけではなく、基礎控除額を上回る遺産を受け取った方のみに課税される仕組みです。
つまり相続税を節税するためには、個人が所有する財産を減らしておく、または基礎控除額よりも少なくすることがポイントとなってきます。
そこで法人を設立して、個人が所有する財産を会社の所有物としておくことにより、個人の財産を減らすことができるのです。
また、これまで不動産オーナーが得ていた家賃収入が、今後は会社に入ってくることにより、貯蓄の増加を防げるというメリットもあります。
メリット②親族を社員にして、給与を支払える
子どもや親族を設立した会社の社員にすることで、財産を給与として支払うことができます。
給与として受け取った場合にも所得税はかかりますが、給与の場合には「給与所得控除」が設けられています。
そのため、控除額を差し引いた残りの分にしか所得税がかかりません。
つまり給与として会社から個人にお金を支払えば、支払うたびに給与所得控除額の分だけ非課税で渡しているということになります。
メリット③死亡退職金を活用して、節税効果を高める
会社を設立したときにぜひ活用したい節税策として、死亡退職金があります。
死亡退職金として、会社から遺族に支払われた金額は、法定相続人×500万円までが計算上非課税となります。
さらに会社が受取人となる生命保険に加入し、会社が受け取った保険金を遺族に支給すれば、個人の生命保険金の非課税額と併用することが可能です。
つまり、会社と個人の両方で生命保険に加入しておけば、保険金の非課税額が2倍になるということです。
不動産を法人化して相続するデメリットとは?
これまで、不動産を法人化するメリットについてご紹介してきましたが、一方でデメリットも存在します。
メリットのみを見て判断し「こんなつもりじゃなかった…」と後悔しないためにも、デメリットに関しても理解しておきましょう。
デメリット①設立費用がかかる
会社を設立するには、それなりの費用がかかります。
定款作成にかかる費用や印紙代などをあわせると、法人設立には約25~30万円が必要です。
設立の手続きは自分でもできますが、場合によっては専門家に依頼しなければならないといったケースもあるでしょう。
その場合は、専門家への報酬費用も用意する必要があります。
デメリット②社会保険加入の義務がある
法人を設立すると、従業員がおらず代表者が1名だけであったとしても、必ず社会保険に加入しなければなりません。
社会保険料の負担額は、健康保険・厚生年金をあわせて「給与金額の約30%」です。
たとえば、年収が300万円であれば社会保険料は約90万円となります。
この保険料は、会社と従業員の折半で支払うことになるため、会社負担といっても、自分が負担するのと同じこととなります。
つまり社会保険の加入義務により、毎月の保険料を負担するというデメリットがあるのです。
デメリット③赤字でも支払わなければならない税金がある
法人を設立すると、たとえ赤字であっても「均等割」の納税義務が生じます。
この均等割は法人住民税の1種で、所得に関係なく課税されます。
均等割は「資本金」と「従業員の数」によって税額が決まりますが、資本金1,000万円以下の中小企業であれば、赤字でも7万円がかかる仕組みです。
個人事業主の場合、赤字だと納税義務が発生しないため、所得に関係なく課税されるものがあるという点は、法人化のデメリットといえるでしょう。
デメリット④法人にはさまざまな税金がかかる
法人を設立すると、法人税・法人事業税・法人住民税の税務申告が必要です。
法人の税務申告は複雑な計算が多いため、税理士に頼む方が多いかと思います。
もし税理士に依頼するのであれば、税理士に支払う報酬も用意しなければならないことを覚えておきましょう。
不動産を法人化して相続する際の注意点とは?
ここでは、相続税対策として不動産を法人化する際の注意点について解説します。
注意点①資本金は1,000万円以下にする
会社を設立する際の資本金を1,000万円以上にしてしまうと、消費税の申告が必要になるなど手間がかかってしまいます。
消費税がかからないようにするためにも、資本金は1,000万円未満にすると良いでしょう。
注意点②自身を株主に設定しない
設立する法人の株主を自分にしてしまうと、会社の株式が相続財産の対象となってしまいます。
仮に自身が死亡した際に株式の評価が高い場合には、相続財産が増加してしまい、相続税が高額になる可能性が考えられるのです。
そうなると、相続税対策で設立した会社の意味がなくなってしまいますよね。
こうした事態を避けるためにも、自身を株主にするのではなく、子どもなどの相続人を株主にすることがポイントです。
注意点③法人の設立は3つに分けられる
不動産の法人化には3つの方法があります。
それぞれにメリットとデメリットがあるため、よく理解したうえでどの方法を選択するか決めましょう。
管理委託方式
不動産管理会社を設立し、その会社が不動産の管理をおこなう方式です。
家賃のなかから管理料を受け取るため、管理料が高いほど相続税対策となりますが、管理料は適正範囲で決める必要があります。
その適正料金は「家賃の5%前後」です。
そのため、手間はかからないけれど大きな節税は期待できないといった特徴があります。
一括借り上げ方式(サブリース方式)
個人の所有する不動産を、設立した会社へ丸ごと貸し出す方式です。
会社は借上げた不動産を、他の入居者に転貸します。
家賃は設立した会社が回収して、そこから不動産の管理料を引いた差額分が、オーナーへ支払われることとなります。
手間はかかるものの、手数料の相場が15%と管理委託方式よりも高額です。
ただし空室が多くなると、回収できる家賃が少なくなるといったリスクがともないます。
不動産保有会社
個人が所有する不動産を、丸々設立した会社へ丸ごと移す方法です。
あげると贈与とみなされ税金がかかるため、個人から会社へ売る形をとります。
登記費用・不動産取得税などのコストがかかるものの、家賃は全額不動産保有会社に入るため、3つの方式なかでもっとも所得税の分散効果が期待できます。
まとめ
相続税対策として、不動産を法人化するメリット・デメリット、また注意点について解説しました。
不動産を法人化するかどうかは、設立や運営にかかる費用と、節税できる金額をよく比較したうえで判断しなければなりません。
仮に法人化で進める場合には、より節税効果が得られうよう、今回ご紹介した注意点を参考におこなうと良いでしょう。
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