不動産の売却は、ご高齢の方にとって大きな決断です。特に将来的な相続を考えている方は、「いつ売るのが良いのか」「売却後の税金はどうなるのか」といった悩みがつきものです。さらに、判断力の低下や悪質な勧誘など、思わぬトラブルに巻き込まれる不安もあるでしょう。この記事では、高齢者が不動産を売却する際に気を付けたい大切なポイントを、わかりやすく解説します。今後の安心と円満な相続に備えて、一緒に学んでいきましょう。
売却を検討する時期と相続との関係
高齢期に差し掛かってから不動産売却を考える際、まずは「相続を見据えた現金化」が有効な手段となります。不動産を売却して現金に換えておけば、分割しやすくなり、相続手続きが円滑に進む可能性が高まります。現物資産を分けるのは難しいため、現金化によって相続人間での公平な分配がしやすくなる点が最大の利点です。
また、空き家や使っていない不動産を保有し続けることには、固定資産税や都市計画税、管理費などの費用負担が継続的に発生するリスクがあります。特に高齢の方の場合、管理の手間や費用の負担が大きくなるため、早めに売却を検討する意義が高いといえます。
さらに、売却を進めるタイミングとしては、本人の健康状態や判断能力が安定しているうちに動き出すことが重要です。認知機能の低下が進行してからでは、売却手続き自体が困難になり、意思能力が不十分と判断された場合には契約が無効となるリスクもあります。したがって、健康で判断力が保たれている時期を活かして、売却の準備を始めることが望ましいでしょう。
| 検討すべき視点 | 内容 |
|---|---|
| 相続を意識した現金化 | 分割が難しい不動産を現金化することで、相続を円滑化できます |
| 維持管理の負担軽減 | 固定資産税や管理費などの負担を減らすことができます |
| 判断能力がある時期の重要性 | 認知機能が安定したタイミングで準備を進めるのが安心です |
税金・保険料など売却による収入増がもたらす影響

不動産売却によって得られる利益(譲渡所得)には、税金と保険料への影響があります。まず、譲渡所得税について整理します。譲渡所得は「売却価額-取得費-譲渡費用」で算出され、譲渡益が発生すると所得税および住民税が課税されます。居住用のマイホームを売却した場合、最大3,000万円の特別控除が適用でき、要件を満たせば課税所得がゼロになる可能性があります。そのため、特別控除の適用要件(居住用、不動産の所有期間、親族間の取引でないなど)を確認することが、まず重要です。
さらに、不動産売却による収入は、後期高齢者医療制度や介護保険料にも反映されます。保険料は前年度の所得を基に計算されるため、譲渡所得が増えると所得割額が増え、翌年度以降の保険料が引き上がることがあります。ただし、マイホーム売却で特別控除が適用され、譲渡所得が0円となれば、保険料は上がりません。逆に、控除が適用できない場合は保険料の負担が重くなる可能性があります。
| 内容 | 説明 | 留意点 |
|---|---|---|
| 譲渡所得税 | 売却益に対して所得税・住民税が課税される | 居住用3,000万円控除を要件確認のうえ利用する |
| 医療・介護保険料 | 前年度所得に基づき算定。譲渡所得が加算される | 特別控除により所得が減れば、保険料負担を抑えられる |
| 年金への影響 | 譲渡所得は給与ではなく臨時の収入として扱われる | 年金額には影響せず、支給額が減ることはない |
最後に、年金についてご安心いただきたい点です。不動産売却益(譲渡所得)は臨時の収入として確定申告対象となりますが、給与所得ではないため年金額には影響しません。年金は、あくまで被保険者期間や保険料納付実績を基に算定されるため、売却益による支給減はありません。
意思能力の低下に備えるための手続き上の注意点

高齢期に差し掛かり、判断能力が弱くなってくると、不動産の売却自体が法的に無効となるリスクがあります。たとえば、認知症が進行し「意思能力」が不十分と判断されると、不動産売却という法的行為を行っても無効とされる可能性があります。これは、民法において「意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、法律行為は無効」と明記されているためです 。
こうしたリスクに対して備える制度として、「成年後見制度」があります。これは、判断能力が低下している方の代わりに成年後見人・保佐人・補助人が財産管理や契約行為を支援・代理する制度です 。制度には2種類あり、「法定後見制度」はすでに判断能力が不十分な場合に家庭裁判所が後見人等を選任するものであり、一方で「任意後見制度」は判断能力があるうちに本人が後見人や代理の範囲を決めて公正証書で契約し、将来に備える制度です 。
とくに注意すべきは、本人が住んでいる「居住用不動産」の売却です。この場合、たとえ成年後見人がいても、家庭裁判所の明示的な許可がないと契約が無効となってしまいます 。たとえば「介護施設入所費用の準備」などといった正当な理由が必要であり、許可がない売却は法的に認められません 。
こうした制度の活用を円滑に進めるためにも、判断能力が安定しているうちに「本人の意思を明確に反映できる準備」をしておくことが重要です。例えば、任意後見制度を利用して、信頼できる後見人をあらかじめ選んでおくことで、後々の売却がスムーズになる可能性があります 。
| 制度の種類 | 利用のタイミング | 代理・同意権の範囲 |
|---|---|---|
| 法定後見制度 | 判断能力が不十分になった後 | 家庭裁判所が選任した後見人による代理・取消など |
| 任意後見制度 | 判断能力があるうちに準備 | 本人が決めた範囲で公正証書により代理権を設定 |
| 居住用不動産の売却 | 成年後見人の有無に関わらず | 家庭裁判所の許可が必須 |
まとめますと、意思能力の低下によって売却が無効とならないよう、制度の種類と要件を理解し、早期から本人の意向を反映できる準備を進めておくことが非常に大切です。
悪質な勧誘・トラブルから身を守るための心得

高齢者が不動産の売却を検討する際には、強引な勧誘や不十分な説明によって思わぬトラブルに巻き込まれる危険があるため、十分な注意が必要です。例えば「今すぐ売らないと損をします」「家賃がずっと不要になります」といった言葉で自宅を訪問し、長時間説得されてしまうケースがあります。契約後に解約しようとすると、高額な違約金を請求されたり、リースバックで住み続けていたにもかかわらず追い出されるような事例も報告されています 。
また、不動産の売却契約には一般にクーリング・オフ制度が適用されません。売主が高齢者のような個人である場合、冷静に考え直せる期間もなく、一度契約してしまうと取り消しが非常に困難になることがあります 。
こうしたトラブルを避けるためには、信頼できる専門家への相談が何より重要です。契約前には以下のような対応を心がけましょう。
| 対策項目 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 即決を避ける | その場で契約せず、じっくり考える時間を持つ | 冷静さを保ち、不要な契約を防ぐ |
| 家族や第三者に相談 | 契約前に必ず意見を聞き、説明内容に不明点がないか確認する | 判断力が低下している場合でも安全性を高める |
| 専門家に相談 | 司法書士や税理士、弁護士などに内容を確認してもらう | 契約内容の妥当性を専門的に評価できる |
信頼できる不動産会社として、当社では高齢者の方が安心して売却を進められるよう、常時無料でご相談を承っております。どのような些細なことでも、お気軽にお問い合わせください。
まとめ
不動産の売却を検討する際、高齢者の方が安心して進めるためには、相続に備えた資産整理の意義や、税金や保険料など売却に伴う費用への理解が欠かせません。また、意思能力の変化にも注意し、健康なうちにご自身の意志を明確にしておくことが重要です。さらに、不当な勧誘や説明不足によるトラブルも少なくありませんので、信頼できる専門家へ相談し、納得した上で手続きを進めることが失敗を防ぐ第一歩となります。今後の安心のためにも、正しい知識と準備を心掛けてください。
