空き家を所有しているものの、どうすれば早く売却できるのか悩んでいませんか。実は、空き家の売却には思わぬトラブルが起こることがあり、放置してしまうと余計な負担や困りごとにつながることも多いものです。本記事では、空き家をめぐる代表的なトラブルの内容と、早めに売却を進めることがどのようなメリットになるのか、またスムーズな売却に向けた具体的な準備について、分かりやすくご案内します。売却を迷う方の一助となれば幸いです。
空き家売却で起こりやすいトラブルとは
まず、空き家を放置しておくと、近隣住民に対して深刻な影響を及ぼすおそれがあります。具体的には、外壁や屋根材の落下、害虫の発生、腐敗臭・景観の悪化、不法侵入による治安悪化などがあり、場合によっては所有者が損害賠償責任を問われる可能性もあります。また、行政から「特定空家」と判断されると、助言・指導・勧告・命令といった段階的対応に続き、改善がなければ50万円以下の過料や行政による強制撤去が行われます。こうしたリスクに備えるためにも、早期に売却の検討が必要です。
さらに、譲渡所得税に関するトラブルも見過ごせません。空き家を相続した際、取得費が不明な場合は売却価格の5%を取得費とみなして税額を計算されるため、税負担が過大になる可能性があります。加えて、「相続した空き家の3000万円特別控除」などの税制特例には適用期限があり、相続後3年以内といった期限を過ぎると適用できなくなります。こうした特例の内容や期限には特に注意が必要です。
そして、ホームインスペクション(住宅診断)を行わずに売却契約を結んだ場合、「契約不適合責任」によるトラブルも起こりえます。たとえば、シロアリ被害や雨漏りなどの欠陥が引渡し後に発覚した場合、売主には修補・代金減額・損害賠償・契約解除といった責任を負う義務が生じます。こうした事態を避けるためにも、事前に建物の状態を専門家に診断してもらうことが重要です。
以下は、主なトラブルとその内容を簡潔に整理した表です。
| トラブルの種類 | 具体的なリスク | 回避のポイント |
|---|---|---|
| 放置による行政対応 | 特定空家認定、過料、強制撤去 | 早期売却、適切な管理 |
| 税負担の増加 | 取得費不明での高額譲渡所得税、特例の適用期限切れ | 取得費資料の整備、期限内売却 |
| 契約不適合責任 | 欠陥発覚による修補や損害賠償、契約解除 | ホームインスペクション実施 |
これらのトラブルは、いずれも空き家売却を検討する際に回避したい重要な課題です。安心して売却を進めるためには、早めに専門的な準備と判断を行うことが欠かせません。
早めの売却がトラブル回避につながる理由

空き家を早めに売却することは、さまざまな面でトラブルを未然に防ぎ、結果として負担を軽減することにつながります。
| メリット | 内容 | 理由 |
|---|---|---|
| 税負担の増加回避 | 固定資産税の優遇解除を防ぐ | 「特定空き家」に指定されると、税率が最大で6倍に上がる可能性があります |
| 資産価値の維持 | 劣化や資産価値の低下を防ぐ | 放置による建物の劣化は、売却の難易度を高め、価格にも影響します |
| 税制優遇の活用 | 譲渡所得の特別控除(3000万円控除) | 相続後3年以内かつ制度の期限である2027年12月31日までの売却で、譲渡益から最大3000万円を控除できます |
まず、空き家を「特定空き家」に指定されると、これまで受けていた固定資産税の軽減措置が取り消され、税負担が最大6倍に跳ね上がるおそれがあります。このような状況を避けるには、早めの売却が非常に有効です。
次に、時間の経過は建物の劣化を進め、結果として資産価値の低下や売れにくい状態を招きます。早い段階で売却を検討することで、こうしたリスクを抑えることができます。
さらに、相続によって取得した空き家を売却する場合、「譲渡所得から最大3000万円を差し引ける特別控除」が活用できます。この制度は、相続開始から3年を経過する年の12月31日までに売却し、かつ2027年12月31日までに譲渡することが条件です。そのため、早めの売却準備を心がけることで、大きな節税効果を得ることが可能です。これらの制度や条件は、信頼できる専門情報に基づいていますので、ご自身の空き家の売却計画にぜひ反映してください。
売却時に注意すべき手続きとコスト

空き家を売却する際には、さまざまな手続きと費用が必要になります。その中でも代表的な費用や注意点を、わかりやすく整理してご案内します。
たとえば、以下のような代表的な費用がかかります。
| 費用の種類 | 内容 | 目安 |
|---|---|---|
| 仲介手数料 | 売却を不動産会社に依頼した場合にかかる成功報酬 | 売却価格×3%+6万円(税別)が上限 |
| 印紙税 | 売買契約書に貼付する印紙代 | 契約金額に応じて数千円〜数万円 |
| 登録免許税 | 所有権移転のための登記にかかる税金 | 固定資産の評価額に応じて算出 |
また、相続登記が未了の場合、売却に必要な手続きに支障が生じる可能性があります。相続登記を早めに済ませておくことで、円滑な売却が進められます。
譲渡所得税の計算では、取得費が重要な要素となります。しかし、取得時の契約書などが見つからない場合、「売却価格の5%を取得費(概算取得費)とする」方法が認められています。この場合、課税対象となる譲渡所得が大きくなる可能性があるため、注意が必要です。具体例として、売却価格が4,500万円の場合、取得費は225万円とみなされることがあります。取得費がわかる場合は、できるだけ実際の金額を用いた計算が望ましいです。
さらに、相続した空き家に関して適用可能な「相続空き家の3,000万円特別控除」には、細かな要件があります。代表的な要件を以下にまとめます:
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 売却期限 | 相続開始から3年後の12月31日まで(ただし、特例は令和9年=2027年12月31日まで延長) |
| 建築時期 | 1981年5月31日以前に建てられた建物であること |
| 工事要件 | 耐震補強または解体を、譲渡の翌年2月15日までに行うことが可能(令和6年=2024年以降の譲渡) |
このような要件を満たした上で、この特例を利用すれば、譲渡所得から最大3,000万円を控除でき、節税につながります。ただし、複雑な手続きや期限がありますので、早めの対応が重要です。
スムーズに売るための準備ポイント

空き家をできるだけ円滑に、かつ迅速に売却するには、あらかじめしっかりとした準備が欠かせません。
まず、ホームインスペクション(建物状況調査)などの事前診断を行うことで、建物の劣化や瑕疵(欠陥)の有無を明らかにできます。これにより、後々の契約不適合責任に備え、買主とのトラブル回避につながります。建物の状態を正確に把握し、適切な修繕や条件設定を行うことが重要です。さらに、隠れた欠陥を事前に告知することで、信頼性を高め、売却条件を有利に進められます。ホームインスペクションに関しては、不動産会社や専門機関に依頼するのが安心です。
次に、権利関係や名義、登記状況を早めに整理しておく必要があります。相続登記や抵当権抹消登記などが未了の場合、売却が進まず手続き上の支障が生じます。特に相続登記は、2024年4月から義務化されており、未登記のまま放置すると罰則の対象となる可能性もあります。また、共有名義や境界未確定のままでは、売却に関して紛争の種となるおそれがあります。司法書士などに早期に相談して、登記手続きや境界確定を進めておくことが安心です。早いうちに整理しておくことで、スムーズな取引が実現します。
最後に、売却のタイミングと段取りをしっかり計画することが、トラブル防止と早期売却に不可欠です。例えば、相続した空き家に対する「3000万円特別控除」は、相続開始から一定期間内(相続翌年以降3年を経過する年の12月31日まで)に売却を済ませる必要があります。さらに、昭和56年以前の建築の場合は耐震基準の充足を確認したうえで、売却方法を選ぶ必要があります。売却期間に余裕をもってスケジュールを立てることで、税制優遇の恩恵を最大限に活用でき、予期せぬ費用負担やトラブルの発生も回避できます。
下表に、準備の主なポイントを整理しました。
| 準備項目 | 内容 |
|---|---|
| 建物の事前診断 | ホームインスペクション等で劣化や欠陥を確実に把握 |
| 権利関係・名義の整理 | 相続登記、抵当権抹消、境界確定などを早期に完了 |
| 売却スケジュール計画 | 税制優遇の期限以内に売却、余裕ある段取りと段階的準備 |
まとめ
空き家の売却には、さまざまなトラブルやリスクが潜んでいますが、早めの対策としっかりとした準備を行うことで、多くの問題を未然に防ぐことができます。特に、税制の特例や行政指導の回避、資産価値の維持など、知っておきたいポイントが多く存在します。適切な手続きや費用の把握、権利関係の整理、そして建物の状態を事前に確認することで、より安全かつ円滑な売却が可能となります。複雑に感じる場面もありますが、一つ一つ確実に取り組むことが、満足のいく売却への近道です。
